日々の身辺雑記や考えたことなどを徒然なるままに書き連ねる「断腸亭日録」です。
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断腸亭日録~自転車日記
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2011.06.27 Mon
中村春吉『自転車・世界無銭旅行』を読む2~愛国者・詭弁家
中村春吉が何故、世界旅行を思い立ったかというその動機は、19世紀末から20世紀初頭の帝国主義思想そのものであると言ってよい。
しかも、こうした野望は、たぶん、明治時代の青年たちが共通に抱いていたものではないだろうか。

曰く。「この中村春吉は世界的日本人となって、日本の大利益を計りたいと云うのが、其の根本精神です・・・」
中国や朝鮮のことで、ごちゃごちゃ言っているのは、小さい小さい。
日本人は、広く南米やオーストラリアやアフリカやインド大陸にも進出して、「富源」を得るべく努力しなくてはならない。
そのために、男、中村春吉は、世界中をこの目で見てやるのだ。

呆れかえるほど正直に帝国主義的理念を開陳する春吉ではあるが、かたや愛国を強制しつつも似非「国際」主義を奨励して若者を世界に進出させるべく腐心する現在の我が国の教育方針と似ていなくもない。

45-3.jpg
(愛国者である春吉は、常に自転車に日の丸を掲げて旅をした)

春吉は言う。
自分は、幼き頃から冒険的なことが大好きだし、武道で鍛えた頑強な体躯を持っている。
12歳の時には、二銭銅貨を握りしめて、単独、朝鮮に渡って死にそうになったこともあるほどだ。
また、自分は「野蛮人」なので、外国語が得意であるとも言っている(これは、面白い理屈である。春吉は、各所で、自分のことを野蛮人と言っている)。

日本国に利益をもたらすのだという春吉の考え方は、しかし、ちょっと変わってもいる。
飴菓子を売るという例を使って、春吉は、以下のように説く。

「例えばここに9銭で仕入れて来た飴菓子がある。これを10銭で売って、1銭儲けてやろうと考えた場合、相手が日本人で、10銭は高い、9銭5厘にまけろと言っても、僕はまけない、嫌ならやめろと引っ込めてしまうが、相手が外国人で、10銭ではどうしても買わぬ、9銭5厘にまけたら買う、と言う場合には、僕は1銭儲ける所を5厘にまけて売ってやる。それで、中村春吉はけしからん奴だなどと悪口言った人も居たが、それは大いに間違っている、悪口を言う人こそけしからん人だ。何故かと言うに、たとい1銭で売ってやったところで、相手が日本人であれば、それは内輪の事だ。つまり一家中で金のやり取りをしたも同然、日本帝国という点から見ると、少しも国家の富を増やした事にはならない。しかし相手が外国人なら、1銭儲ける所を5厘で勘弁してやったにしても、その5厘という利益は、外国人の財布から取り上げた事になる。そうして外国人はペロリと飴を食べてしまえば何も残らないが、日本帝国には5厘だけでも富が残ると言うものだ」(58-59頁)。

かなり乱暴な議論ではあるが、これには不思議な説得力がある。
普通なら、同じ日本人には安く売ってやるが、外国人には高く売りつけるというのが「愛国」的行為と見なされるのかもしれないが、春吉の経済思想はもう一段深いものである。
しかも、economyというギリシャ語由来の言葉の語源、「オイコス(家)+ノモス(法)=家計」という意味合いを響かせてもいる。
なかなかの詭弁家である。

春吉の詭弁家としての面目躍如たる例をもう一つ。

船でラングーン(現・ヤンゴン)の港に着いた春吉は、下船しようとすると、税関吏から自転車の関税を払えと言われる。
持ち金が尽きそうな春吉は、ここで一計を案ずる。
春吉は、こっそりと靴を脱いで裸足になり、自転車に跨って、こう言い放つ。

「『もしもし、この国では旅人の履物に関税を掛ける法律があるのですか?』と真面目な顔をして問うと、税官吏は変な顔をして、『いや。履物に関税を掛ける国があるものか。何故そんな事を聞くのだ?』と訝(いぶか)る。
僕はしめた!と小膝を打ち、
『しからば僕の自転車に関税を掛ける法はありません!』
『そりゃまた如何いう訳で・・・?』
『どういう訳でもありません!他の自転車は知らぬが、僕の自転車は僕の履物です!ご覧の通り僕は素っ裸足です、何も履いておらぬ、即ちこの自転車が僕の履物です。この国では人間が履物を履く必要が無い、素っ裸足で歩けと言うなら仕方無いが、いやしくも履物に関税を掛けるという法律の無い以上は、僕の自転車に関税を掛けるのは不法です!』と、屁理屈捏(こ)ねると、税官吏は奇妙な顔をしておりましたが、余程可笑しかったものと見え、クスクス笑い出し、
『飛んだ大きな履物もあればあるもんだ、まぁ良い、見逃してやる』と言うので、僕はまた押さえられぬ内にと、急いで税関を抜け出し、スタスタ市街の方へ走り去りました」
(165-166頁)。

いやはや、これはお見事というほかはない!

挿絵
(書中の挿絵)

(続く)

テーマ:自転車 - ジャンル:趣味・実用
自転車文学    Comment(4)   TrackBack(0)   Top↑

Comment
詭弁と言えば詭弁ですが Posted by しゃあ あずなぶる
羨ましくもあります。
ボクなんか「あ~、あの時は○○と言ってやればよかった」って思うばかりです。
2011.06.29 Wed 14:03 URL [ Edit ]
機転が利く Posted by 断腸亭
しゃあさん

詭弁と言うと聞こえが悪いのですが、機転が利くということですね。
その時々で、一番効果的な言動ができるということが、どんなに大切なことかは分かってはいても、なかなか出てくるものではありませんね。
2011.06.30 Thu 06:43 URL [ Edit ]
矢張り大者ですね Posted by 相子
大者と言いますか、知恵者と言いますか、機転が効きますね。頭の構造が違うのでしょうか。
また祖父のことで済みませんが、祖父は器用ですし、知識が凄かったのです。でも私には優しく、何かやって貰い「お爺さん上手ね」と言いますと「あそこには3年奉公したから」と必ず言うのです。皆嘘です。平気で嘘を言いながら何でもやって呉れました。
2011.06.30 Thu 20:43 URL [ Edit ]
有能ということ Posted by 断腸亭
相子さん

そうそう、それも、明治生まれの人の特徴かもしれません。
私の祖父も、自転車や風呂釜の修理から、小屋を建てたり、鳥籠を作ったり、植木の剪定、鶏を絞めて解体することまで、とにかく何でもできるんです。
昔の人は、本当に有能だったと思います。
2011.07.01 Fri 14:47 URL [ Edit ]

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